葬送のフリーレン|シュタゲとの比較で紐解く、時間の不可逆性と喪失の理由
こんにちは、ミサキです。
ふとした瞬間に、過ぎ去った時間を愛おしく思うこと、ありませんか?
今日お話ししたいのは、『葬送のフリーレン』と『STEINS;GATE』という、二つの物語について。
この二作品、テーマは「時間の流れ」や「喪失」という点でどこか似ているように感じられます。でも、読み終えたあとの、胸に刺さる痛みの質が、まるで違うのです。
この2作品を比較してわかった、ある"決定的な違い"。それは、キャラクターたちが「取り返しのつかない死」に対して、どちらを向いて、どのような眼差しを向けているのか、という点でした。
過ぎ去った時間を、後悔という名の宝物に変えていく――『葬送のフリーレン』
『葬送のフリーレン』の物語は、ある「終わり」から始まります。
かつて魔王を倒した勇者一行の、その後の物語。長命種であるエルフのフリーレンにとって、人間たちの歩む時間はあまりにも短く、あまりにも速い。
物語の序盤、ヒンメルの葬儀のシーンを思い出すと、今でも胸が締め付けられます。
「人間の寿命は短いってわかっていたのに……なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう」
その言葉が、静かに、でも重く響くあの瞬間。彼女は、かつて共に旅をした仲間が、自分にとってどれほど大切な存在だったのかを、その死をきっかけに知ることになります。
ここでの「死」は、決して変えることのできない、絶対的な断絶です。
フリーレンは、失われた時間を取り戻そうとはしません。代わりに、彼が残した足跡を辿り、彼の些細な仕草や、大切にしていた思いを、少しずつ「知ろう」とする旅に出ます。
彼女にとっての時間は、過去を書き換えるためのものではなく、過ぎ去ったものの中に、どれだけの愛を見つけ出せるかを探すためのもの。
後悔は、決して消えない傷跡ではなく、彼を忘れないための、温かな「思い出」として、彼女の旅路に寄り添い続けているのです。
繰り返される悲劇と、書き換えられない傷跡――『STEINS;GATE』
一方で、『STEINS;GATE』が突きつけるのは、もっと痛烈で、抗いようのない絶望です。
科学の力によって、過去へとメールを送ることができる。その小さな一歩が、取り返しのつかない、残酷な運命の連鎖を引き起こしていく。
主人公の岡部倫太郎は、愛する人たちの死という「結末」を回避するために、何度も、何度も、時間を遡ります。
何度も繰り返される、仲間たちの死。
「……あれ、私、何してたんだっかな?」
そんな、記憶が混濁していくような、まるで自分という存在が削り取られていくような、恐ろしいほどに無垢で悲しいセリフ。
彼は、結末を変えるために、自らの精神を削り、世界線の分岐に翻弄され続けます。
ここでの「死」は、回避すべき、克服すべき「バグ」のような存在です。
アトラクタフィールドという、避けられない運命の渦の中で、彼はどれほど手を伸ばしても、どうしても手が届かない「死」の影に怯え、戦い続けます。
彼にとってのタイムリープは、過去を救うための希望であると同時に、忘れたくても、忘れることができない「傷跡」を、何度も何度も、新鮮な痛みとして刻み込んでいく作業でもあるのです。
視線の向きが決定づける、喪失の捉え方
この二つの物語を並べて見てみると、見えてくる大きな違いがあります。
それは、キャラクターたちの「視線の向き」です。
『葬送のフリーレン』のキャラクターたちは、常に「過去」へと視線を向けています。
ただし、それは過去に執着して立ち止まるためではなく、過ぎ去ったものの中に、今の自分を形作る「意味」を見つけ出すためです。
彼らにとって、死は「受け入れるべき、風景の一部」なのです。
対して、『STEINS;GATE』のキャラクターたちは、常に「未来」を、あるいは「変えたい過去」へと、必死に視線を向けています。
彼らにとって、死は「抗うべき、壊すべき運命」です。
過去を書き換えることで、現在の絶望を消し去ろうとする、その激しい葛藤が、物語の推進力となっています。
一方は、受け入れることで、喪失を「記憶」という名の糧に変えていく。
もう一方は、抗うことで、喪失を「戦い」という名の意志に変えていく。
この、時間の捉え方の対比こそが、読者の心をこれほどまでに揺さぶる理由ではないかと、私は思うのです。
どちらの道の先にも、私たちが愛さずにはいられない「祈り」がある
こうして比較してみると、一見すると正反対の物語に見える二作品ですが、根底に流れる「祈り」のようなものは、どこか似ている気がしてなりません。
取り返しのつかない死を、ただの悲劇として終わらせたくない。
たとえ、どれほど苦しくても、たとえ、どれほど孤独であっても、その命がここに存在したこと、その瞬間が確かにあったことを、誰かに、あるいは世界に、刻みつけたい。
エルフが旅の果てに見出す、優しくも切ない「追憶」。
科学者が、幾多の地獄を越えて辿り着こうとする、たった一つの「希望」。
どちらの物語も、私たちは、キャラクターたちが抱える痛みから目を逸らすことができません。
けれど、その痛みを、あの美しい映像や、胸に迫る音楽と共に、最後まで見届けたいと思ってしまう。
比べなければ気づかなかった、時間の残酷さと、それを乗り越えようとする意志の美しさ。
それを見つけたとき、私たちの心には、また新しい、物語への愛が生まれるのだと、強く感じました。
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