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【仏教神話で読む鬼滅】「十二鬼月」と仏教。「上弦・下弦」に隠された意味とは?

  • 執筆者の写真: Ka T
    Ka T
  • 11月14日
  • 読了時間: 4分

こんにちは!漫画ブロガーのオサムです。

『鬼滅の刃』において、鬼殺隊の前に立ちはだかる最強の鬼たち、「十二鬼月(じゅうにきづき)」

鬼舞辻無惨の直属の配下であり、その強さは他の鬼とは一線を画しますよね。

僕は、この「十二鬼月」というネーミングに、作者の非常に深い意図が隠されているのではないかと睨んでいます。

特に、**「十二」という数字と、階級を示す「上弦・下弦」**という言葉。

これ、実は**「仏教神話」**の視点から見ると、ものすごく皮肉で、恐ろしい意味が浮かび上がってくるんです。

今日は、本棚の『東洋神名辞典』や『魔法事典』を片手に、その謎を深掘り考察します!

なぜ「12」なのか? 仏教における神聖な数字

まず、なぜ鬼の幹部は「10人」でも「8人」でもなく、「12人」だったのでしょうか。

この**「12」**という数字は、仏教の世界において非常に重要で、神聖な意味を持つ数字です。

例えば…

十二神将(じゅうにしんしょう):薬師如来(病気を治す仏様)を守護する12体の武神。

十二天(じゅうにてん):仏教の世界観を守護する、12の方角の神々。

十二因縁(じゅうにいんねん):人間が「迷い」や「苦しみ」から逃れられない理由を12の段階で示した教え。

このように、「12」は仏法や世界を**「守護する」**神聖な数であり、あるいは人間の「迷い」の根源を示す数でもあります。

鬼舞辻無惨は、人間を襲い、仏法の対極にいる存在です。

その無惨が、自らの最強の配下に、あえて仏法を守護する神々と同じ「12」という数字を冠している…。

これは、**神聖なものに対する強烈な「冒涜(ぼうとく)」であり、「皮肉」**ではないでしょうか。

彼らは仏法を守護する「十二神将」ではなく、無惨という「悪」を守護する「十二鬼月」なのです。

「上弦・下弦」=月の満ち欠けが示す「無常」

さらに強烈なのが、彼らの階級を示す「上弦(じょうげん)」と「下弦(かげん)」という言葉です。

ご存知の通り、これは**「月の満ち欠け」**を表しています。

鬼たちは「永遠の命」を求めて鬼となり、人間を見下しています。

しかし、彼らの階級は「太陽」ではなく、夜に浮かぶ「月」によって定められている。

ここに、仏教の根幹にある**「無常(むじょう)」**という考え方が隠されています。

「無常」とは、「この世のすべてのものは常に移り変わり、永遠なるものはない」という教えです。

月は満ちては欠け、欠けては満ちる(=無常)。

「永遠」を渇望する鬼たちが、その組織の階級自体が「無常」の象徴である「月の満ち欠け」によって決められているのです。

特に、無惨の気分次第で入れ替えられ、殺されていく「下弦」の鬼たちは、まさに「無常」の恐怖そのものの中にいます。

「月」は「悟り」か、それとも「迷い」か

仏教において「月」は、非常に多義的な象徴です。

一方では、『魔法事典』にもある「Mandara(曼荼羅)」の世界や密教の瞑想(月輪観)で描かれるように、満月は「悟り」や「仏性(ぶっしょう=仏様の心)」の象徴とされる、清らかで神聖なものです。

しかし、もう一方では、**「水面に映る月」が「掴もうとしても掴めない、虚(うつろ)なもの」の例えとして使われるように、「迷い」や「虚像」**の象徴でもあります。

十二鬼月たちは、鬼舞辻無惨という「月(=虚像の光)」に照らされ、永遠の命という「迷い(=水面に映る月)」を掴もうとしている存在だとは言えないでしょうか。

以前の記事(【鬼滅の刃 考察】「鬼」とは何者か?~)で、鬼のルーツには仏教の鬼神「羅刹(らせつ)」や「夜叉(やしゃ)」がいると考察しました。

神話では、そうした荒ぶる鬼神も、仏の教えに触れることで「八部衆」や「十二神将」のような守護神へと生まれ変わることがあります。

しかし、『鬼滅の刃』の鬼たちは、無惨という「偽りの仏」に帰依し、決して悟る(=夜が明ける)ことなく、永遠の「迷い」の夜を生き続けるのです。

まとめ

「十二鬼月」というネーミング。

それは、仏教の神聖な数字「12」をあえて使うという**「冒涜」

そして、永遠を求める彼らが「月」という「無常」「迷い」の象徴に支配されているという、強烈な「皮肉」**。

この恐ろしいほどの深い設定が、『鬼滅の刃』の「鬼」という存在の哀しさと恐ろしさを、より一層際立たせているのではないでしょうか。

いやあ、ネーミング一つでここまで考察が捗るとは!

『鬼滅の刃』、本当に奥深い作品です。

オサムでした。

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